米軍普天間移設/SACO合意の原点に戻ろう | 世界日報サポートセンター

米軍普天間移設/SACO合意の原点に戻ろう


 在日米軍基地の再編問題で、沖縄の米軍普天間基地の移転案をめぐり、政府と県および移転先の名護市の間で対立が続いている。移転案は昨年、日米両政府間で合意したもので、米側は事実上の最終案とみている。名護市では十五日告示の市長選が行われるが、候補者すべてが同案に反対だ。


危険の軽減が目的だった


 現状が続けば、三月末にまとめられる米軍再編に関する「最終報告」は、地元の反対を押し切る形で“決着”するしかないだろう。普天間基地移設の原点である、十年前の日米特別行動委員会(SACO)の合意に戻って、整理し直すことが今こそ必要ではないか。


 日米両政府は昨年十月、激論の末、名護市米軍キャンプ・シュワブ兵舎地区と海上を使って滑走路を建設するという案で合意し、中間報告をまとめた。米国側が大幅に譲った形だが、その背景には日本側が「速やかに完全に履行する」と約束したことがある。


 ところが、その合意はすでに辺野古沖合に移転することを決定していた沖縄県および名護市が外された形でなされた。そのため、稲嶺恵一知事は県案が受け入れられないなら、県外移転を求めることが県の基本的考え方であると述べ、日米両政府案を批判した。


 ここで考えたいのは、十年前にSACOが最終合意された際の原点ともいえる背景だ。それは、同基地が市街地の真ん中に位置しているため、住民の危険を除去することにあったはずだ。市街地の中に基地を造ったのでなく、基地の周囲に住宅が集まり、危険と騒音の中に県民自ら飛び込んだ歴史も思い起こしたい。同合意はまた、普天間基地の代替施設を「沖縄本島の東海岸沖に建設する」とした。県外移転ではなかった。


 確かにこれまで、今回の合意案に近い案も含め、さまざまな案が出され消えていった。だが、そうした経緯にこだわらず、危険を軽減するために一刻も早く移転することこそ、県民が求めていることではないか。移転案が「十戸の民家の上空を通過するから危険なので反対」といった今の反対運動は、反対のための反対にすぎない。


 また、同案を実行すると、那覇軍港や牧港補給地区などの基地千五百㌶分を北部に移転できる。しかも統合するので三分の一の面積で代替でき、基地の整理縮小という県の方針に合致している。在沖海兵隊約七千人の移転も実現できる。逆に、移設が暗礁に乗り上げれば、二〇〇〇年度から十年間で千億円を支出する北部振興策がストップする可能性がある。


 さらに、日米同盟関係が良好に維持され、東アジアの安定を確保し続けられよう。昨年、中国は反国家分裂法を成立させ、台湾の独立阻止に武力行使も辞さないとする台湾政策を明確にしたが、台湾海峡に有事が起きれば、日本への原油運搬がストップしてしまう。沖縄の基地はわが国の命運を握っているとも言えるのだ。


 政府・与党は「最終報告」を念頭に置きつつ、関係自治体への財政措置を柱とする在日米軍再編推進法案の策定作業に入っている。


 その中に、公有水面の埋め立てに関する知事の承認権限を国に移管する特別措置を含める意見も出ている。そうなると、国と県との感情的なしこりが決定的なものになってしまう。



地元も柔軟性が必要


 米国は飛行ルート変更などの微調整に応じるべきだ。また、政府は一層の振興策を示し、地元もまず反対ありきの姿勢ではなく、柔軟性をもって政府と解決策を練るべきである。


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