尖閣諸島問題ー中国の本当の狙いとは? | 世界日報サポートセンター

尖閣諸島問題ー中国の本当の狙いとは?

尖閣諸島問題 中国が日米分断に利用
米政府は明確な日本支持を
タシク元米国務省中国分析部長が指摘



 【ワシントン15日早川俊行】米大手シンクタンク、ヘリテージ財団の上級研究員を務めるジョン・タシク元米国務省情報調査局中国分析部長はこのほど、世界日報社とのインタビューに応じ、日中間の懸案事項の一つである尖閣諸島の領有権問題について、中国は日米を分断するために同問題を利用しており、「米政府は同盟関係を維持するために、中国の不当な主張に対抗して、日本を支持しなければならない」と強調した。


 クリントン前民主党政権は、日米安保条約が尖閣諸島にも適用されることを明示しなかったが、タシク氏は「米政府のあいまいな態度が、日本と中国の主張はともに妥当性があるというメッセージを中国政府に送っている」と、同政権時代の“あいまい戦略”を強く批判した。


 現在のブッシュ共和党政権では、国務省が二〇〇四年三月に「尖閣諸島は日本政府の管理下にあり、日米安保条約は尖閣諸島に適用される」との公式見解を発表している。タシク氏はこの対応に一定の評価を与えた上で、「将来の政権が民主党であろうと、共和党であろうと、それに関係がないとは言えないだろう」と述べ、今後、民主党政権が誕生しても、この公式見解は堅持されるとの見通しを示した。


 ただ、「中国は今も、米国が本当に尖閣諸島にコミットするのか、確かめたがっている」として、日米離間を狙った中国の挑発的行為は今後も続くと予想。このため、「日米両国は尖閣諸島を含む東シナ海での中国の挑戦に対応できるように、緊密に協議しなければならない」と指摘した。


 また、中国が尖閣諸島の領有権を強く主張するのは、天然資源の獲得以外に、①地域で卓越したパワーであることを喧伝(けんでん)する②尖閣諸島に対潜水艦戦システムが配備されるのを防ぐ――狙いがあると分析した。


尖閣諸島に日米安保適用は当然―ジョン・タシク氏との一問一答
現政権の公式見解、今後も堅持
中国の主張の背景に潜水艦戦略


 ジョン・タシク元米国務省情報調査局中国分析部長との一問一答は以下の通り。

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プロフィール

 ジョン・タシク ジョージタウン大学卒業、ハーバード大学大学院修了。米国務省入省後、台湾、中国、香港で勤務したほか、同省情報調査局中国分析部長を務める。現在、米シンクタンク「ヘリテージ財団」アジア研究センターの上級研究員。専門は中国、台湾、モンゴル問題。著書に『本当に「中国は一つ」なのか』など。
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 ――中国は尖閣諸島の領有権問題をどのようにとらえているのか。


 中国も台湾も一九六〇年代終わりまで、尖閣諸島に全く関心を持っていなかった。国連の報告書によってこの地域に天然資源があることが判明してから、まず台湾が領有権を主張し、その後、中国が主張し始めた。


 ただ、当時の中国と台湾は資源開発を考えていただろうが、自らの政府の正統性を主張することの方が大切な要素だったと思う。台北は「亡命政府」、北京は「革命政府」であり、六〇年代は両者とも国内外で正統性を高めようとしていたからだ。台湾に続いて、中国が領有権を主張しだしたという順序もそのことを表している。


 現在も中国が尖閣諸島の領有権を主張するのは、資源目的のほかに二つの理由がある。一つは、中国がこの地域で卓越したパワーであることを喧伝(けんでん)するためだ。つまり、プロパガンダ目的だ。

 第二に、中国は戦略的な目的から尖閣諸島の領有権を確立したいと考えている。日本は琉球列島はじめ日本中に非常に強力な対潜水艦戦能力を保持している。中国は尖閣諸島周辺地域におけるいかなるプレゼンスをも排除し、同諸島に対潜水艦戦システムが配備されるのを防ぎたいのだ。



 ――尖閣諸島は法的にも歴史的にも日本固有の領土であることは明らかだ。



 尖閣諸島の地位ははっきりしている。「先占」という国際法の原則に基づき、一八九五年に日本が最初に領有権を主張した。その時から第二次世界大戦の終わりまで、沖縄県の一部として管理され、日本の降伏後は米国の施政権下に置かれた。


 一九七二年に米国が日本政府に沖縄を返還した際、尖閣諸島はその中に含まれている。米国が尖閣諸島を常に日本領とみなしてきたことは疑いがない。

 

――中国は日米を分断するために、尖閣諸島問題を利用できると考えているのでは。


 そうだと思う。中国はフィリピンが領有権を主張する南シナ海の島や岩礁を奪ったとき、同盟関係にくさびを打つのはたやすいことが分かったはずだ。


 米国とフィリピンの条約は十九世紀後半にスペイン政府によって作られた地図に基づいていた。われわれはその地図で定義されたフィリピン領土の防衛を引き受けていたが、無人島や岩礁などは規定されていなかった。その結果、米国は係争中の岩礁や島に対する防衛義務やコミットメントを拒否してしまった。


 ただ、尖閣諸島は違う。尖閣諸島は日米安保条約によってカバーされている。日米安保条約の交渉が行われた時も、尖閣諸島の問題が扱われ、条約の範囲内であることがひそかに合意された、と私は理解している。


 しかし、誰もそのことを声高に言わない。リチャード・アーミテージ氏はブッシュ元政権で国防次官補を務めていた時、尖閣諸島問題を数回取り上げたが、クリントン政権は駐日大使の発言によってあいまいさを示してしまった。


 米政府のあいまいな態度が、日本と中国の主張はともに妥当性があるというメッセージを中国政府に送っている。中国はクリントン政権時代以来、この問題で日米同盟の間を裂く方法があるかどうか、模索してきた。米政府は日本との同盟関係を維持するために、中国の不当な主張に対抗して、日本を支持しなければならない。


 現在のブッシュ政権も二〇〇二、〇三年ごろは、あいまいな態度を示していたが、〇四年三月に国務省が初めて尖閣諸島は日米安保条約によってカバーされていることを明確にした。


 ただ、中国は今も、米国が本当に尖閣諸島にコミットするのか、確かめたがっている。昨年九月、中国海軍の軍艦が東シナ海で、海上自衛隊のP3C哨戒機に砲身を向けるという出来事があった。これは非常に挑発的な行為だ。米政府は「挑発的なことはやめろ」と表明すべきだった。


 日米両国は尖閣諸島を含む東シナ海での中国の挑戦に対応できるように、緊密に協議しなければならない。そうしないと、中国はこの問題を日米同盟に摩擦を引き起こす「ウェッジ・イシュー(分断争点)」として利用してくるだろう。

 ――ブッシュ共和党政権は尖閣諸島に日米安保条約が適用されるとの立場を明確にしているが、今後、民主党政権が誕生した場合、米政府の政策に変化が生じる可能性はあるか。


 ブッシュ政権が国務省を通じて、尖閣諸島は日本の管理下にあり、日米安保条約の範囲内であるという公式見解を発表した事実は大きい。将来の政権が民主党であろうと、共和党であろうと、それに関係がないとは言えないだろう。そもそもこれは真実なのだから。

 また、二〇〇八年大統領選挙の民主党候補は、同盟を重視する人物になるだろう。民主党はヒラリー・ク

リントン上院議員をはじめ、誰が候補になっても労働組合の熱烈な支持が必要になる。善かれあしかれ、労働組合は中国に対する反感を強めている。米国の雇用や工場が中国に移転していることに、強い懸念を抱いているためだ。従って、将来の民主党政権は中国問題に対してあまりシンパシーを抱かないだろう。


 

――離島地域への対応能力を含め、日本の防衛力をどう見るか。



 日本は対潜水艦戦能力は非常に高いし、ミサイル防衛もそうだ。だが、日本の防衛費全体を見ると、多くのお金が対潜水艦戦とミサイル防衛につぎ込まれている。このため、その他のために残るお金が少ない。日本はアジアの大国として、現実的な防衛予算とはどういうものかという観点で考えるべきだ。


 日本がまずしなければならないのは、平和憲法の下で半世紀続いてきた一国平和主義から脱却することだ。集団的自衛権の考え方を一般大衆や有権者に広げていく時だと思う。日本人は集団的自衛権の重要性や法的、哲学的な側面を説明したり、特に若者の間にアイデンティティー感覚を高めていく指導者を必要としているのではないだろうか。



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