中朝首脳会談/6ヵ国協議再開につなげよ | 世界日報サポートセンター

中朝首脳会談/6ヵ国協議再開につなげよ

 北朝鮮の核問題の平和的解決を目指す六カ国協議の再開が滞っている中で、金正日総書記が訪中し、胡錦濤国家主席と会談した。両首脳は核問題の平和的解決と同協議の推進で一致したという。政治的にも経済的にも北の最大の支援国は中国だ。金総書記の訪中が実りある六カ国協議再開につながることを期待したい。


異例ずくめの金正日訪中


 今回の訪中は公式には昨年秋の胡主席の平壌訪問の答礼ではあるが、それにしても異例づくめだった。高級車を連ねた一行の動向については中国側の情報統制は徹底した。厳戒警備でホテルから宿泊客は追い出され、道路も大渋滞した。一昨年の訪中の際、金総書記を乗せた特別列車が自国内へ入った数時間後に、大爆発事故があり、テロを極度に警戒した北側の要請があったようだ。


 今回の訪中の狙いについては、米国による対北制裁解除で中国の協力を得ることと、中国の経済改革の学習の二つが挙げられよう。北は六カ国協議再開を渋っている理由として米国による金融制裁を挙げている。ブッシュ米政権は「犯罪国家」の北が、マカオの銀行を不法に得た資金の洗浄に利用しているとして、同銀行との金融取引を禁止した。この措置で北は重要な資金調達拠点を失い、相当な痛手を受けた。


 米政府はこの問題と六カ国協議は関係ないとしているが、北京訪問中の六カ国協議・米首席代表のヒル国務次官補と北の金桂寛外務次官が中国の仲介で接触したところからみて、何らかの打開策が話し合われた可能性がある。


 金総書記は中国の社会主義に基づく開放政策に強い印象を受け「中国の改革・開放は正しかった」との最大級の賛辞を贈った。かつて、中国の改革・開放政策を社会主義路線の逸脱として批判したこともあった。相次ぐ国内経済の停滞からついに脱帽したわけだが、厳重な管理社会の同国でどれだけ中国式開放経済が受け入れられるかは疑問だろう。


 ここで考えておかねばならないのは、北にとっての中国、中国にとっての北の位置付けだ。


 北にとり中国は韓国動乱での盟友であり、食糧支援の三分の一以上、石油供給の70―90%という最大の援助国である。米国の「一極支配」に抵抗する上で、社会主義国としての連帯は頼りになる存在だ。中朝関係に北の生き残りが懸かっているともいえる。


 一方、中国にとり北の体制維持は優先課題だ。地政学的に見て北は中国東北部に接する戦略的重要性を持つ。北が崩壊すれば、数百万人の難民が中国側に流入するし、北に米国の影響力の強い政権が成立することは防衛上好ましくない。鉄鉱石、亜鉛などの豊富な鉱山資源も確保したい。


 外交カードとしても北の存在は中国にとり重要だ。胡主席は四月下旬に訪米し米中首脳会談を行うが、ブッシュ政権が北の核放棄説得で期待を寄せているのは中国だ。北の核問題は中国が世界に貢献する大国としての姿を世界にアピールする格好の道具でもある。



対北で毅然とした態度を



 中朝の蜜月ぶりが演出された。しかし、それだけではダメだ。中国は国際ルールにのっとり大国として振る舞うつもりなら、脱北者の人道的処理や外貨偽造、麻薬密輸、拉致などの国際犯罪で毅然とした態度を取るべきである。有事の際に、中国が北に軍事支援することを定めた中朝条約は今も生きている。中朝関係を建設的な方向に向けることを望みたい。

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