通常国会開幕/最重要課題を後回しにするな | 世界日報サポートセンター

通常国会開幕/最重要課題を後回しにするな


 百五十日間におよぶ通常国会が開幕した。きょうから小泉純一郎首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が始まる。首相は演説の中で、幕末の志士・吉田松陰の言葉を引用しつつ、「改革」続行の決意を表明した。しかし、その中身は行政改革推進法案など「改革」の総仕上げ案件などにとどまっている。


松陰の志士像から程遠い



 小泉首相には最重要課題を後回しにし、花道をつくって退陣後も後継政権に影響力を行使するという野心があるように見受けられる。もしそうなら、「溝や谷に落ちて屍(しかばね)をさらしても構わない」覚悟で「志」を実現すべきだと諭した松陰の理想的志士像から最も懸け離れていよう。


 首相最後の通常国会とされるだけに、もっと「志」を高く掲げて国家の根幹と前途にかかわる重大かつ困難な憲法や教育基本法の改正問題にも真正面から取り組むべきだ。「対案・提案」路線を掲げる野党民主党にも「志」の質と高さを競う政治力を求めたい。


 小泉首相が演説で長時間費やしたのは、公務員の総人件費削減、政府系金融機関の統廃合などの基本方針を盛り込んだ行政改革推進法案の必要性だった。これは五年、十年先まで見通した諸改革であるため、後継政権に「構造改革」路線を継承させたい狙いも込められていた。


 首相はまた、「民間主導の景気回復の道を歩んでいる」と実績を強調する一方で、「消費税」に言及した。しかし、「税体系全般にわたって、見直しを行う」と抽象的に触れただけで先送りにした。


 小泉政治の特徴は、難問を後回しにする手法である。それは「改革」の目指すビジョンがないところから来ている。理想像を追求しない「改革」は、一時的に成果を上げても長続きはしないだろう。逆に、後退や破壊をもたらすことすらあり得る。


 国家の理想像と目標を明確にするためには憲法改正が不可欠だが、それを抜きにして進められる「小泉改革」は結局、表面的な改革にとどまらざるを得ない。


 首相は演説で「新しい時代の憲法の在り方について、国民とともに大いに議論を深める時期」と述べた。そのためにも、改憲のための国民投票法案の早期成立はもとより、常設の憲法委員会を国会に置くよう指導力を発揮すべきだ。


 教育基本法の改正については、初めて「速やかな改正」を目指すと一言述べた。四年九カ月前の初の所信表明演説で「米百俵の精神」の重要性を説き、教育改革に期待を持たせた。だがその後、実績は何もないに等しい。「速やかな」はよいが、他党との妥協により改悪にならないよう注意してもらいたい。


 首相はまた、皇室典範改正案を今国会に提出すると明言した。この案は「女性・女系天皇容認」「長子優先の皇位継承」を柱としているが、皇位は百二十五代にわたり男系で引き継がれている。「改革」の名の下、皇室の伝統を軽んじ正統性を揺るがすようなことを急いではならない。もっと国民に開かれた議論をすべきだ。



前原主導の党内改革を



 一方、民主党は「行革国会」と位置付ける政府・与党に対し、「安全国会」とし、米国産牛肉輸入、耐震偽装、ライブドアなどの問題で小泉政権を追及していく構えだ。それらの問題の解明と同時に、外交・安保・憲法の基本問題で党内を一本化させる、前原誠司代表主導の党内改革を早く実現させてもらいたい。そこから政権交代の芽も育つことになろう。



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