日米豪戦略対話/中国への能動的対応を歓迎 | 世界日報サポートセンター

日米豪戦略対話/中国への能動的対応を歓迎


 麻生太郎外相はオーストラリアのシドニーでライス米国務長官、ダウナー豪外相と対中情勢について話し合い、不透明な中国の軍拡への懸念を共有した。

 軍拡に加えて中国は、影響力拡大とエネルギー資源獲得を狙って各地で外交攻勢を展開し、日米豪三国は受け身に立たされていた。価値観を共有する三国が中国への能動的対応ともいえる初の閣僚級戦略対話を行ったことを歓迎する。中国の高まる脅威に対応して南太平洋地域での対中抑止力が強化されることを望む。



海洋同盟と大陸国家の対立


 米政府が発表した政策文書「国家安全保障戦略」の改訂版は「中国は地球規模の役割を担うに当たって、責任ある利害共有者として振る舞わなくてはならない」と強調した。三カ国は共同声明で同様の期待を表明した。中国に責任ある大国の道を選択するよう求めるとともに、軍事脅威を抑止するという二重路線が三国の立場だ。


 中国の軍拡についてラムズフェルド米国防長官は「どの国からも脅威を受けていないにもかかわらず膨大な資金を注入している」と非難した。ライス国務長官も中国の国防予算が前年比14・7%増になったことに懸念を表明した。


 問題は中国の意図だ。同改訂版は、米国の対外政策の最終目標は世界の圧政の終結だとし、すべての国の民主化運動の支援が米国の政策だと述べた。その上で圧政国家として北朝鮮、イランなど七カ国を挙げたが、問題は中国がその多くに支援を与えていることだ。


 脅威は軍事力プラスその国の意図から生じるが、警戒されるのは米本土に届く戦略核ミサイルや攻撃型原潜の開発に加えて空母建造の意向を示していることだ。中国の圧政国家支援は資源獲得を超えて、「米覇権」への挑戦が狙いと見られ、台湾に対しても制覇を超えたところにあると見てよい。


 着々と援助を続けるミャンマーへの接近にも要注意だ。雲南省から同国を通ってインド洋に抜ける原油パイプライン建設計画を進めている。狙いはインド洋への出口確保だ。中国は南下政策を進め、ラオス、カンボジア、ベトナムにも攻勢は及び、東南アジア全域を影響下に置こうとしている。


 中国の海軍力増強と東南アジアへの政治的進出は日本のシーレーン(海上交通路)を脅かす。日本への脅威を増大させ、日米同盟関係を分断することが狙いにある。


 日米豪対中国の関係は、究極的には「海洋同盟」対「大陸国家」の構図だ。中国はロシアと結んで「大陸同盟」を形成し、上海協力機構を通じて中央アジアからの米勢力排除を打ち出した。日米豪に英国を加えた四カ国は「大陸同盟」に対する「海洋同盟」といえる。


 われわれの課題は、中国の軍拡と南下戦略に対応するため共通戦略を打ち出すことだ。オーストラリアも、中国が東アジア共同体構想で豪州やインドを排除する姿勢を打ち出したことは、米豪同盟をつぶし、豪州を中国の影響下に置くことだとみて警戒している。


 歓迎されるのは、ブッシュ米大統領のインド訪問で中国の脅威封じ込めに成果を上げたことだ。米国はベトナムとも軍事協力で合意した。東ティモールでの人権侵害を理由に禁止していたインドネシアへの武器輸出を解禁した。これらの延長線上に日米豪の戦略対話が実現した。



対米中外交に戦略視点を


 靖国問題が日中友好の障害といわれているが、同問題を超えて「大陸同盟」と「海洋同盟」の共存は可能かの大きな戦略的視点が日本の対米、対中外交に必要だ。

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